写真や動画には残せないもの

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昨日お散歩中に見上げた空がすっかり秋の顔をしていて驚きました。今年の夏はあっという間だったな。

たくさん楽しいことして、思い出いっぱいの夏でした。

忘れないうちにアルバム作りを始めています。

 

今日の話は、そんなアルバム作りを通して思ったこと。

 

 夏の雨

夏休み中に、両親と一緒に晩ごはんを食べに行きました。

父と母と息子と娘と私。まだ明るい夕方の空の下、5人でプラプラと近所のごはん屋さんへ。

お腹いっぱいご馳走になって、帰ろうとすると降っているのかいないのかわからないくらいの弱い雨が降ってきました。

母が持っていた折り畳み傘でベビーカーに乗る娘を守りつつ、急ぎ足で帰っていたのですが、途中で本降りになってしまい、雨宿りをすることに。

ほんの数秒でびしょぬれになるような、いわゆるゲリラ豪雨。

しょうがないので母が傘を持って先に自宅に戻り、人数分傘を持ってきてくれることになりました。

薬局のちょっと突き出た屋根の下で、空を見上げながら雨宿りする父と私と息子とベビーカーの娘。

 

写真を撮って見たけれど

隣で話す息子の声も聞き取りづらいくらいのすごい雨。

なんだか楽しくなってきて、スマホで写真を撮りました。その写真を見ていて思ったのです。

 

この写真には、父も息子も娘もいて、景色も雨の風景も全部映ってるのに、なんでか今と全然違う。

 

ゴーっと耳に響く雨の音も、屋根からこぼれるように滴ってくる雫も、このムッとする重たい空気も、そこには映っていませんでした。

 

この目がフォーカスしてるあれもこれもレンズには映らない

娘に雨がかからないように、ぐっと力を込めてベビーカーを押さえる父の手の、骨ばっているのに柔らかそうな皮膚の感じ。

辺りを真っ暗にするくらい、日常から遮断されたような豪雨の中で、ちょっとドキドキしている横顔でゆらめく息子の目。

雨粒がついた娘の足をタオルで拭いていたら、ふっくらした足がひょこひょこくすぐったそうに動いたこと。

 

この瞬間を切り取っていつでも見返せるようにしたいのに、残しておきたい物にかぎってレンズを素通りしてしまう。

 

そういうものは、自分の目に、皮膚に、心に焼き付けておくしかない。

 

写真に残せないものは心に刻もう

雨宿りの最中に父が、いつだったか仕事帰りに同じように雨に降られて、この薬局の前で雨宿りをしたことがある、と話してくれました。

そのときは妹が傘を持って迎えに来てくれて、あれは本当に助かった、と。

 

写真にも残さないような、ささやかな出来事だけど、そのとき妹が迎えに来てくれたことを父は今も覚えているんですよね。

きっと父は、父を見つけた時の妹の表情とか二人で歩いた数分足らずの帰り道の雰囲気も覚えているのではないかな。

 

写真や動画には残らない、残せない。

この目が、心がフォーカスしたその一瞬、その感覚を忘れないようにしたいなと思います。